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涼水十選

珈琲屋 無上帑(むじょうど)

富士市南松野

無上帑(むじょうど)の綺麗な川 無上帑(むじょうど)外観 無上帑(むじょうど)テラスから 無上帑(むじょうど)室内から 無上帑(むじょうど)のせせらぎ 無上帑(むじょうど)看板 無上帑(むじょうど)の野菜

何気ない時間を涼しく過ごす贅沢

ここは旧富士川町、富士市南松野。庄屋風の存在感のある建物とよく手入れが行き届いた苔むす庭。国の登録有形文化財である大きくて美しい、独特な形状の傘をもつ火の見櫓(やぐら)が見守るこの場所、久保田野園内にある無上帑(むじょうどう)という趣のあるカフェからお届けします。

まさに隠れ家という言葉がぴったりなこちらは、街中の喧噪から離れており、小鳥のさえずりと、湧き出る天然水のせせらぎの音が聞こえます。のんびりとした時間の流れは、暑さを忘れさせてくれるとっておきの場所。

店主の久保田さんは株式会社イワセイという建築会社の役員をされています。建築会社と言えば、家を建てることが主と思われがちですが、久保田さんに限ってはライフスタイルを彩る空間をプロデュースする方といったほうがしっくりくるでしょう。

こちら無上帑の敷地に足を踏み入れると、まずは涼を感じさせるせせらぎの流れと、観音水と呼ばれるミネラルが豊富な水。そしてコーヒーを淹れるのにも使われている南アルプスからの湧水と、三種類の水がお出迎え。また樹木や野花などは自然のままに近づけつつ、手を加えすぎない状態を保っているのだそうです。気取らずにありのままの姿の緑や水の流れが創りあげる庭の情景が心を落ち着かせてくれます。

そして本格和風の建物の引き戸を開けると、まず目に飛び込むのが眼前に広がる富士山と田園風景をまるで額に入れ込んだような畳4帖分はあろうかという大きな窓枠。高い天井に、力強くかつ頼もしく艶やかな大きな梁。当然のことながらこれら全ては久保田さんのプロデュースによるもの。こちら無上帑で涼しさを感じることができるのは、緑の美しさや水の音だけでなく、建物や庭の造作を用いた空間の構成のしかたにその秘密があるのではないかと想いをめぐらせましょう。

そしてこの空間を楽しみながら一杯のコーヒーをオーダー。無上帑のお品書きは「ぶれんど」「アイス」「季節のコーヒー」と「ジュース」のみ。それぞれに久保田さんの奥さまがチョイスしたスイーツがちょこんと添えられています。

温かいコーヒーは丁寧に焼いたと思われる和のテイストを感じさせる器。冷たいドリンクは丸みを帯びたかわいらしいボダムのカップ。決して主張をするわけではないけれど、無上帑での時間をさりげなく彩ってくれる小さなアイテムです。

踏みしめる砂利の音、ささやかに奏でられるせせらぎの音。いつまでも眺めていられそうな庭を眺めながらのコーヒーブレイクも楽しめます。こちらの庭ではちょっとしたステージもあり催しものも企画されることがあります。久保田さんを中心とした「櫓an(やぐらあん)」という古きよき日本の文化を伝承し、地域おこしを目指すグループにより年末にはイルミネーションなども催されます。

富士山、緑溢れる庭、湧水、凛とした建物。涼を感じるに十分すぎるスペックが揃った無上帑。この場所のいたる所には、昔からある和風建築や自然の風景をうまく活かしつつ、住まう人とのコラボレーションを創りあげていきたいという久保田さんの願いがちりばめられています。

店名の“無上”は、「この上もないこと。もっとも優れているさま。最上」という意味。“帑”という字は蔵や在り処という意味。最上の贅沢な場所とでもいいましょうか。知る人ぞ知る日常のなかの非日常として、涼を求める人達に一度は訪れていただきたいと思う反面、自分だけの秘密の場所にしておきたいというジレンマもあります。

悩みに悩んで詳細な地図はあえて掲載しないことを決めました。

このような場所を探すことで涼を求めていく本質を感じることができるはずです。

撮影場所/珈琲屋 無上帑