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書く

すずりに水を注ぎ、墨を磨る。書道における手作業はここから始まります。遅くもなく、早くもない一定の間隔で磨り続ける時間の中で心を研ぎ澄まし、長短、強弱を付けながら綴る文字に美を重ねる。流派にもよりますが、書に感情を表現することで、腕の流れを乱すことがあっても呼吸は乱さない。書を学び、書を表現していくことで得られるこの一連の所作は、書道が人間修養に繋がっていることを教えてくれます。書の美的表現を追い求め、一流一派に縛られず自らの書を表現する木村華暢(かちょう)さん。その作品は伝統芸術としての美しさを残しつつ、自分らしい書を追い求める木村さんだからこそできる無垢な表現によって、見る者に語りかけてくるようなものばかり。「書で結ばれたそれぞれの縁が結びつき、自分自身や空間など全てが調和した素晴らしい瞬間に巡り合えた時、見る人に語りかけてくる書が生まれるのだと感じています。現在、書を通してたくさんの方と出逢えて素晴らしい人生を送ることができています。一回生起の時の流れの中で書と出逢えた幸せに感謝しています」と話してくれました。書道への畏敬の念を忘れない和の心。そして、その心で繋がれる出逢いの輪。これらが調和された時に生まれる自分らしい表現は、他に変えることができないほど美しいものだと教えられました。

取材・撮影協力/書家 木村 華暢