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点てる

小さな門をくぐり、茶室に入るまでの敷石、つくばいの風情。体をかがめて入室するにじり口。採光や一輪挿しなど必要最小限にして最大のおもてなしの空間の演出。棗(なつめ)に入れられた抹茶を茶杓でそっと茶碗に入れ、沸いたお湯を注ぐ。茶筅でかき混ぜ、優しい泡をたくわえた香りのよい抹茶が座のまえにすっと差し出される。お茶を点てる一連の所作は凛としているものの、張り詰める空気はなく、気がつくと見入ってしまう得も言われぬ心地よさ。日本のいただき、富士山が眼前にそびえる富士宮市の白糸の滝のほど近くに、心も体も一服できる静かな茶房があります。裏千家茶道教授の佐野宗静さんは、多くの方に、お茶に触れてもらいたいと、お稽古をする機会を提供するだけでなく、立ち寄った方のこころと体を癒すお茶をワンコインで振舞ってくれます。気取らなくていい。言葉以上に何かを語りかけてくる点前を愉しみ、つむがれる数奇な縁(えにし)に身を委ねて。自らの内面を整え、続く余韻までを感じとってください。優雅なお点前を受けるだけでなく、自らもお茶を点ててみたいと思う和のこころに触れることができました。

取材・撮影協力/茶房 知足