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女性と農Life

ちゃの生

 標高450m、駿河湾を見渡せる富士山の麓。ここ富士市大渕の広大な農地でお茶やブルーベリー、多種に渡る野菜を育てる豊田さん。農業の魅力と野菜の美味しさを伝えるために、独自で一般の方向けに農業体験を開くなどして幅広く活動しています。
「農業の魅力ってなかなか伝わりづらいんですよね。どうしても農業は肉体労働で大変とか儲からないとか、自然に左右されてしまうというイメージばかりが表立ってしまうんです。でも裏側にはたくさんの魅力が詰まっているということを多くの人に知ってもらいたくて、そのために自分に何ができるかと考えてみたら『農業体験』だったんです」と話してくれた豊田さん。
 30歳の時に母親が病気になったことで「食」の大切さを改めて知ってから、近所の人と一緒に市民農園を借りて家庭菜園を始めたのだとか。農家に育った豊田さんですが、それまでほとんど農業に興味が無かったため、最初は右も左も分からない状態だった(笑)と当時を振り返っていました。しかし、市民農園を利用している中で野菜作りに少しずつ興味がわき、規模も段々と大きくなっていったと言います。この頃、作って食べるという流れを多くの人と共有したいということから農業体験を一般の方向けに始めたところ、それが好評で豊田さん自身も楽しかったそうです。その時に「実家に戻り、母親がやろうとしていたブルーベリーの収穫体験をやろう」と決意したことが農業人としての始まり。
 富士の実家に戻ってからは、そのブルーベリー畑を中心に『親子の農業体験』を行っていて、「野菜を育てて食べることの喜びを知ってもらえますし、野菜ができるまでの経過を知らない子どもも多いですが、体験を通してちょっとした感動もあるように思えます。あと、意外と親子のコミュニケーションの場としても役立っているかもしれません」。
 農業を体験するというのは『五感を使って野菜に触れること』になり、その魅力はやはり体験して初めて分かるのではないかと思います。豊田さんは言いました「誰かがこの魅力を伝えていかなければ、農業はどんどん若い人に受け入れてもらいづらくなってしまう。でもそれは本当に残念なことですよね。だから私にできることをこれからも探していきます」。
 もはやスーパーに行けば当たり前のように手に入る野菜ですが、まずは農家さんへの感謝の気持ちと、農業への関心を食べる側の私たちも考えていかなければいけないと感じました。

取材協力/ちゃの生

なないろ畑

 青と緑に囲まれ、雑多な音や人ごみとは縁遠い自然の中で環境と共存しながら農業をしている岩田さん。
 小柄な彼女の農業人としてのルーツは少し変わっているように思えました。今回取材させていただいた農家さんは「親が代々農業をやってきたから自分が守っていく」という方が多い中で、岩田さんは、中学生の頃の授業で砂漠に緑を育てている団体の存在を知り、地球に優しい環境づくりに興味を持ったと言います。そして、環境について勉強するため大学へ進学。そこで植物の研究を中心におこなっていたそうなのですが、種類が多くて楽しいし、自分で育てて食べられる野菜の魅力に浸かっていったのだとか。
 そんな彼女の就職先はフルーツトマトの水耕栽培。勤めているうちに「トマト以外の野菜も育ててみたい!」と思うようになり、勤めながらあちこちの農家さんにお願いをして土を使って野菜を育てる勉強をさせてもらったそうです。その時に、自然の中で農業をやるって楽しいし素敵だなと気づき、水耕栽培の仕事を辞め、本格的な農業修行の旅に出ることになったのです。行く先々で自然と共存しながら野菜を育てることを学んでいき、6年前に生まれ育った富士市で自分の畑を持つことに。
 岩田さんの農業のポリシーは「土におまかせ」。農薬は一切使わずに土や自然の力を信じてそれに逆らわずに育てることが自分には合っていると話してくれました。
 最初は野菜を収穫したものの、販売先を見つけるのが大変で、家の前で売っていたり、農協の直売所に持って行ったりしていたこともあったそうですが、現在では、岩田さんが「土におまかせ」で育てた野菜の美味しさが口コミで広がり、個人のお宅にセットで販売をしている他、毎月の出張販売やレストランへ定期的に届けています。
 毎年、「今年は何を植えようかな」と考える楽しみとお客さんに「あの野菜が美味しかったよ」と言ってもらえた喜びが次のステップへの活力。逆に大変なのは、「台風などの自然災害を除けば草取りぐらいですね(笑)。でも草取りの作業も嫌いじゃないですよ。自分には合っている作業かも」とも話してくれました。
 のどかな自然と大らかな岩田さんにのびのびと育てられた野菜は、かじった瞬間瑞々しさと野菜本来の力強い味が口の中いっぱいに広がります。

取材協力/なないろ畑